歩いて、食べて。
シンガポール・チャイナタウンの歩き方 ― 激安グルメと多宗教の街
- タイプ
- 街歩き(グルメ・お土産・多宗教の寺院/半日)
- 最寄り
- チャイナタウン駅(ダウンタウン線・北東線)/マクスウェル駅も至近
- 見どころ
- 元ミシュランの激安グルメ/お手頃お土産/仏教・ヒンドゥー・イスラムの寺院
- 名物
- 醤油チキン麺・海南チキンライス・胡椒の効いたバクテー/極彩色のヒンドゥー寺院
- 予算感
- ホーカー飯は1皿4〜7ドル(約500〜880円)前後。寺院は基本参拝無料
- 注意
- 人気店は行列/現金推奨の屋台あり/昼は暑い/寺院は肌の露出を控える服装で

新しい名所が次々できるシンガポールですが、昔ながらの街歩きが楽しいのがチャイナタウン。狭いエリアに安うまグルメ・お手頃なお土産・そして仏教/ヒンドゥー/イスラムの三つの宗教の寺院がぎゅっと詰まっていて、半日でシンガポールの“素顔”を味わえます。最寄りはチャイナタウン駅。屋根付きのアーケード商店街パゴダ・ストリートあたりから歩き始めるのが定番です。
かつてはこの街の屋台が「世界一安いミシュラン星」として世界中で話題になりました。星そのものは後年に失われましたが(後述)、味と安さ、そして行列の熱気は健在。食いしん坊にも、文化好きにも刺さる街です。
安うまグルメの、聖地。
まずはグルメ。チャイナタウンには、数ドルの激安価格でミシュランのビブグルマン(コスパ部門)に名を連ねる名店がいくつも集まっています。チキンライスにバクテー、土鍋ごはん——どれもローカルが日常的に食べる味で、観光客向けに澄ましていないのが魅力です。
元・一つ星香港油鶏飯麺(Hawker Chan)Liao Fan / Hawker Chan
チャイナタウンを代表する醤油チキンの名店。本店はホーカー「Chinatown Complex(チャイナタウン・コンプレックス)」2階の屋台(#02-126)で、ブランド店「Hawker Chan」のショップハウス店舗も近くにあります。2016年、シンガポール初のミシュランガイドで一つ星を獲得し、数ドルで食べられる「世界一安いミシュラン星」として一躍世界的に有名になりました。
醤油チキン星は失ったが、味と行列は健在Soya Sauce Chicken
ただし、この一つ星は2021年に外れています(ミシュランの掲載から消えました)。店頭の看板も「2016・2017・2018・2019」と、星を獲っていた年を誇らしげに掲げたまま。とはいえ味も人気も衰えず、今も行列は途切れません。かつて世界最安のミシュラン星として話題になった店、という事実は変わらないので、その物語ごと味わうのが楽しい一杯です。値段はじわり上がって1皿3.5ドル(約440円)前後(時期で変動)。

看板の醤油チキン麺Chicken Noodle
名物は、つやつやの醤油チキンをのせた麺(または飯)。香ばしく照りの効いた鶏肉と、たれを絡めた細麺の相性が抜群で、青菜が添えられます。あっさりしつつコクがあり、確かに「数ドルでこれは反則」という満足感。混雑時は相席が基本、空いた席を素早く確保するのがホーカーの作法です。
200店超ホーカーの拠点 Chinatown ComplexChinatown Complex
グルメ巡りの拠点になるのが、このチャイナタウン・コンプレックス。シンガポール最大級のホーカーセンターで、200を超える屋台がひしめきます。後述のクレイポット飯やHawker Chan本店もこの中。外観はオレンジの柱が目印で、駅からも近く、まず腹ごしらえという時に頼れる場所です。

赤いランタンの食堂街Hawker Stalls
中に入ると、天井から赤いランタンが連なり、湯気と活気でいっぱい。フードコートというより“市場の食堂街”という趣で、ローカルに混じって席を取り、好きな屋台で頼んで運ぶスタイル。支払いは現金の屋台も多いので、小額紙幣を用意しておくと安心です。冷房は弱めなので、暑い時間帯は飲み物を片手に。なお大型ホーカーには菜食(素食)の屋台もあり、ベジ対応の麺・ごはん・点心が見つかります(心配なら屋台で「vegetarian?」と確認を)。
ビブグルマン天天海南鶏飯(マクスウェル)Tian Tian
チキンライスの超有名店。場所はChinatown Complexではなく、South Bridge Road沿いの別のホーカー「マクスウェル・フードセンター」内(仏牙寺の向かい側、徒歩数分)。ミシュラン・ビブグルマンの常連で、昼時は長い行列ができます。混みすぎなら、同じセンター内の他のチキンライス店に回るのも手です。

しっとり海南チキンライスHainanese Chicken Rice
シンガポールの国民食ともいえる海南チキンライス。茹で鶏のしっとりした旨みと、鶏出汁で炊いた香り高いごはん、そしてピリッとしたチリソースの三位一体。シンプルなのに完成度が高く、なぜ皆が並ぶのか食べれば分かります。チャイナタウンにはビブグルマン認定のチキンライスが複数あり、この料理がいかに街に根づいているかが伝わってきます。
ビブグルマン蓮合本記(クレイポット飯)Lian He Ben Ji
Chinatown Complex の2階にある、知る人ぞ知る名店。炭火で炊く土鍋ごはん(クレイポット・ライス)が看板で、鶏・腸詰・青ねぎがのり、鍋底のおこげが香ばしい。ビブグルマンを2018年以降ずっと保持する実力店です。家族で40年以上同じ一角を守り、「三姉妹のクレイポット」とも呼ばれます。炭火で炊くため提供まで時間がかかる(待つ価値あり)。場所がやや分かりにくいので、店番号を頼りに探してください。
胡椒香る、バクテーの店。
チャイナタウン界隈のもう一つの名物がバクテー(肉骨茶)。豚のスペアリブを煮込んだスープで、シンガポールでは胡椒を効かせた澄んだ「潮州(テオチュー)式」が主流。ごはんにも揚げパンにもよく合う、滋味深い一杯です。
ビブグルマン松發肉骨茶(Song Fa)Song Fa Bak Kut Teh
シンガポールで最も有名なバクテー店のひとつ、松發(ソンファ)。チャイナタウンに近いNew Bridge Road沿いの本店は、赤いオーニングと行列が目印。1969年に屋台から始まった老舗で、今や海外にも展開する人気ぶりです。ミシュラン・ビブグルマンの常連で、食事どきは外まで列が伸びます。

澄んだ胡椒スープが効くPeppery Soup
運ばれてくるのは、透き通った胡椒の効いたスープに骨付き肉がごろり。マレーシアの濃い漢方系バクテーと違い、シンガポールはすっきり胡椒辛い潮州式。これがごはんに驚くほど合い、揚げパン(油條)を浸して食べるのも定番。スープはおかわり無料の店が多いのも嬉しいところです。

店頭の受賞掲示Bib Gourmand
本店の窓には、ミシュラン・ビブグルマンの受賞掲示がずらり。「2016・2017・2018・2019・2021・2022」と並び、長く評価され続けてきたことが一目で分かります。星付きレストランではありませんが、ビブグルマンは“コスパの良い実力店”の証。気取らず通える名店、というこの街らしい一軒です。
お手頃、お土産天国。
お土産はチャイナタウンで買うのが安くてよし。屋根付きのアーケード商店街パゴダ・ストリート沿いを中心に、雑貨からお菓子まで、お手頃な店がぎっしり揃います。
激安$2 shopSouvenir
チャイナタウン駅をパゴダ・ストリート方面に上がってすぐ。名前は「$2 shop」ですが、実際は1〜5ドル(約130〜630円)ほどの雑貨・小物がぎっしり。マグカップやマグネット、キーホルダーなど、ばらまき土産にも自分用にもちょうどいい。値札のない品はレジで確認を。

The Gift ShopBulk
その名のとおりのまとめ買い向きのお店。特にチョコレートなどお菓子系が豊富で、小物もまとめ売り。職場や学校へのばらまき土産を一気に揃えたい時に便利です。とにかく安いのが魅力ですが、賞味期限は確認しておくと安心。
お土産探しの中心は、屋根付きのパゴダ・ストリート。両側に露店が並び、奥には高層ビル群。雨や日差しをしのげるので、暑い昼でも歩きやすいのが嬉しいところです。
三つの宗教が、隣り合う。
観光らしい観光も。仏教・ヒンドゥー・イスラムの寺院が、South Bridge Roadのほんの数百メートルの間に並んで建っています。移民が築いた多文化都市シンガポールの縮図のような一角です。
仏教・2007年仏牙寺龍華院Buddha Tooth Relic Temple
2007年開基と比較的新しい仏教寺院(2007年5月31日のヴェサックデーに正式開堂)。唐代様式の朱塗りの多層建築が迫力満点で、内部は金ぴかで荘厳。最上階には仏舎利(仏陀の歯と伝わる聖遺物)を納めた金の仏塔があります。気合を入れて近年作られた大寺院を見る機会はなかなか無く、チャイナタウンでも一番人気のスポット。参拝は無料、肌の露出を控えた服装で。
仏牙寺の本堂内部。金色に輝く三尊像を正面に、朱色の卓と座が整然と並び、外観に劣らず内部も荘厳。靴を脱いで静かに見学できます。
ヒンドゥー・1827年スリ・マリアマン寺院Sri Mariamman
一気に雰囲気が変わる、極彩色のヒンドゥー教寺院。1827年にNaraina Pillaiが創建したシンガポール最古のヒンドゥー寺院で、244 South Bridge Roadに建ちます。入口の塔門(ゴープラム)には神々の彫刻がびっしり並び、見上げるだけで圧倒されます。仏牙寺のすぐ近く。靴を脱いで入場し、肩や膝が出る服装は避けて(羽織りの貸出あり)。


スリ・マリアマン寺院の内側。左:色とりどりの旗が渡された門の奥で、参拝者が祈りを捧げる現役の聖所。右:見上げると、極彩色の神々が描かれた天井と曼荼羅状の文様が広がります。
イスラム・1830年代ジャマエ・モスクMasjid Jamae
同じくSouth Bridge Road沿いに建つ由緒あるモスク。チュリア(南インド系ムスリム)の人々によって、現在の建物は1830〜1835年頃に完成しました(礼拝所自体は1826年頃から)。先の二つに比べると外観は控えめですが、白を基調とした独特の門が印象的。仏教・ヒンドゥー・イスラムの三宗教が徒歩数分圏に共存する——これこそチャイナタウンの面白さです。
モデルルートと、歩き方。
見どころが密集しているので、回り方さえ押さえれば半日で十分。暑さと行列を避けるコツを踏まえた、おすすめの順番をご紹介します。

基本はSouth Bridge Road沿いWalking Route
チャイナタウン駅からパゴダ・ストリート(お土産)→ トレンガヌ・ストリート → South Bridge Road(寺院群)と進むのが王道。寺院は仏牙寺・スリ・マリアマン・ジャマエ・モスクが一本道沿いに並びます。グルメのChinatown Complexとマクスウェルもこの周辺。全体が狭いエリアに収まるので、地図がなくても歩いて回れます。

支払いと両替のことCash & Payment
観光店や寺院はカード/QR決済が増えていますが、ホーカーの屋台は現金のみのところも残っているので、小額紙幣を用意しておくと安心。街なかには写真のような両替所も多くありますが、レートはまちまち。大きな両替は市内中心部の業者でまとめて済ませておくのが無難です。英語は公用語のひとつで屋台や店でも問題なく通じるので、注文や買い物で言葉に困ることはまずありません。
- 激安うまグルメの宝庫(ビブグルマンの名店が徒歩圏に集中)
- 三つの宗教の寺院が数百mの間に並ぶ多文化の面白さ
- MRTチャイナタウン駅直結、半日でぎゅっと回れる
- お土産がとにかく安い(パゴダ通りで雨も日差しもしのげる)
- 人気店は行列必至(昼時はとくに)
- 屋台に現金のみの店が残る(小額紙幣を用意)
- 昼間は暑い・冷房弱め(夕方が歩きやすい)
- 寺院は服装マナーあり(肌の露出を控える・靴を脱ぐ)
- 食事は11時前後か14時以降にずらすと行列が比較的マシ。Hawker Chan本店やTian Tianは昼ピークを外したい
- 暑さ対策で夕方スタートも快適。パゴダ通りは屋根付きで日差しをしのげる
- ホーカーは席を先に確保→屋台で注文が作法。ティッシュなどを置いて場所取りする習慣も
- 屋台は現金のみの店あり。小額紙幣(2〜10ドル札)を多めに
- 散策順はパゴダ通り→トレンガヌ通り→South Bridge Roadの寺院群が効率的
- 寺院は肩・膝が隠れる服装で。スリ・マリアマンなど靴を脱ぐ寺院もある(羽織りの貸出あり)
- 水分補給を忘れずに。冷房の効いた屋内(駅やモール)でこまめに涼むと楽
夜の、チャイナタウン。
昼の喧騒も良いですが、チャイナタウンは夕方からの表情もまた格別。日が傾くとショップハウスの街並みが柔らかい光に包まれ、提灯が灯り始めます。暑さが和らぐ時間帯でもあり、夜の散策はおすすめです。

ライトアップと夕涼みEvening Stroll
日が暮れる頃には気温が下がり、歩くのがぐっと楽になります。ショップハウスや寺院がライトアップされ、昼とはまた違うしっとりした雰囲気に。仏牙寺は夜も外観が美しく照らされ、写真映えもします。屋台や食堂は夜も営業しているところが多く、夕食はここでと決めて夜に訪れるのも良い計画です。
灯りの灯り始めたチャイナタウンの一角。昼の活気とは違う、落ち着いた夜の表情も魅力です。
移民が積み重ねた、多文化の街
チャイナタウンは、19世紀にこの地へ渡ってきた中国系移民が暮らしを築いた街として始まりました。狭い区画にショップハウス(間口の狭い長屋式の商店兼住宅)が立ち並ぶ独特の街並みは、その時代の名残です。今も食堂・薬種店・お茶屋などが軒を連ね、生活の匂いが色濃く残っています。
面白いのは、中国系の街でありながらヒンドゥー教やイスラムの礼拝所が同じ通りに建っていること。シンガポール最古のヒンドゥー寺院スリ・マリアマンが1827年、その隣のジャマエ・モスクが1830年代——いずれも南インド系の移民が築いたもので、中国系の街区に200年近く前から共存してきました。多様な出自の人々が肩を寄せ合って暮らしてきた、シンガポールという国の成り立ちが、この数百メートルに凝縮されています。
そこへ2007年、唐代様式の壮麗な仏牙寺龍華院が加わりました。古い屋台街と新しい大寺院、ヒンドゥーの極彩色とモスクの静謐——時代も宗教も違うものが当たり前のように同居している。その雑多さこそ、チャイナタウンを歩く一番の醍醐味だと思います。
グルメも、お土産も、文化も。
半日でシンガポールの“素顔”が楽しめる街です。
このあたりで、あわせて。



