マレーシア / クアラルンプール
▶ マレーシア / クアラルンプール
Chinatown
提灯の街、
プタリン通り。
取材・写真 編集部街歩き 半日
▶ クアラルンプール

クアラルンプール・チャイナタウン(プタリン通り)歩き方 ― 提灯・寺院・市場の街歩き

エリア
チャイナタウン(ジャラン・プタリン=茨厂街
最寄り
MRT/LRT Pasar Seni(パサール・セニ)駅すぐ
見どころ
提灯のアーケード/寺院/セントラルマーケット/REXKL
所要
半日(2〜4時間)
名物
屋台飯・チキンライス(Nam Heong)・激安お土産
注意
露店のブランド品は基本コピー品・値段交渉が前提
見どころは、提灯のプタリン通り・多宗教の寺院・セントラルマーケット・話題のREXKL。
見どころは、提灯のプタリン通り・多宗教の寺院・セントラルマーケット・話題のREXKL。

近未来的なツインタワーのKLにも、下町の活気が残る一角があります。それがチャイナタウン。目抜き通りジャラン・プタリン(茨厂街)は提灯が空を覆い、露店とレストランがひしめく東南アジアらしいカオス。すぐ近くにはマレーシア最古のヒンドゥー寺院や、1888年創設のセントラルマーケット、旧映画館が甦った話題のREXKLまで揃い、半日で“多民族都市KLの素顔”を味わえます。最寄りはPasar Seni駅。シンガポールのチャイナタウンとはひと味違う、雑多な熱気が魅力です。

1

提灯が、空を覆う。

まずは主役のジャラン・プタリン(茨厂街)。屋根付きのアーケードに無数の赤い提灯が連なり、両側に露店がびっしり。Tシャツ、雑貨、時計、そして“それっぽい”ブランド品まで、見て歩くだけで楽しい通りです。

緑のアーチ門が、入口の目印茨厂街

緑のアーチ門が、入口の目印Petaling Street Gate

プタリン通りの入口に立つ、緑の中華アーチ門。ここがチャイナタウンの玄関口です。通りの名「茨厂(チーチャン)」は、KLの礎を築いた華人の頭領カピタン・ヤップ・アロイが営んだタピオカ(茨)工場に由来するとも言われ、19世紀の錫鉱業で栄えた街の歴史がそのまま地名に残っています。

赤い提灯の、屋根付きアーケード

赤い提灯の、屋根付きアーケードCovered Bazaar

通りには屋根が架かり、赤い提灯がびっしり。日差しもスコールもしのげるので、暑いKLでも歩きやすいのが嬉しいところ。露店は朝から夜まで営業し、夕方以降がもっとも賑わいます。人混みはかなりのものなので、スリ対策に貴重品は前に。活気に飲まれながら、ぶらぶら歩くのが正解です。

ブランド品は“それっぽい”もの値段交渉

ブランド品は“それっぽい”ものBargain & Fakes

露店に並ぶバッグ・時計・サングラスなどのブランド品は、基本的にコピー品です。そのつもりで、雰囲気と掘り出し物探しを楽しむ場所。值札のない品が多く、値段交渉が前提なので、提示額の半額くらいから笑顔で交渉してみましょう。Tシャツや雑貨、お土産はここで安く揃います。

ジャラン・プタリンの中華門。4言語のウェルカムサインが、多民族都市らしい一枚。奥に市場が続きます。

ジャラン・プタリンの中華門。4言語のウェルカムサインが、多民族都市らしい一枚。奥に市場が続きます。

2

中華の街に、ヒンドゥーの神々。

チャイナタウンなのに、その一角に極彩色のヒンドゥー寺院が建っています。中華・インド・マレーの文化が肩を寄せ合う——KLらしい“ごった煮”が、ここに凝縮されています。

スリ・マハ・マリアマン寺院ヒンドゥー・1873年

スリ・マハ・マリアマン寺院Sri Maha Mariamman

チャイナタウンの縁に建つ、マレーシア最古の現役ヒンドゥー寺院1873年にK.タンブーサミー・ピライが創建し、当初はピライ家の私的な祠でしたが、1920年代後半に一般へ開かれました。入口の塔門(ゴープラム)には神々の像がびっしり積み重なり、見上げるだけで圧倒されます。毎年タイプーサムには、ここからバトゥ洞窟銀の山車が出発することでも知られます。靴を脱ぎ、肌の露出を控えた服装で。

ゴープラムを真下から。神々の彫像がぎっしり。中華の街のただ中に、インドの神々の世界が同居します。

ゴープラムを真下から。神々の彫像がぎっしり。中華の街のただ中に、インドの神々の世界が同居します。

關帝廟(Guan Di Temple)中華廟

關帝廟(Guan Di Temple)Guan Di Temple

スリ・マハ・マリアマンのすぐ隣には、極彩色の屋根と赤い提灯が華やかな中華廟・關帝廟。三国志の英雄・関羽(関帝)を、商売繁盛と武運の神として祀ります。ヒンドゥー寺院と中華廟が文字どおり軒を連ねる——1本の通りに二つの信仰が同居するのが、KLチャイナタウンならでは。線香の煙のなか、静かに手を合わせる地元の人の姿も見られます。

街を築いた、ヤップ・アロイ

中華の廟も点在します。なかでも仙四師爺廟(Sin Sze Si Ya Temple)は、1864年にカピタン・ヤップ・アロイが創建したKL最古の中華寺院。錫鉱の街として混乱期にあったKLを束ねた立役者が、自ら建てた廟です。ヒンドゥー寺院、中華廟、そしてすぐ近くにはモスクまで——提灯の通りから一歩入れば、いくつもの信仰が線香の煙とともに静かに同居しています。

3

お土産は、セントラルマーケットで。

クラン川のほとりに建つ、水色のアールデコ建築。1888年創設のセントラルマーケット(Pasar Seni)は、マレーシアの工芸品と土産が一か所でそろう、屋内の市場です。

1888年からの、水色の市場1888年

1888年からの、水色の市場Central Market / Pasar Seni

『CENTRAL MARKET SINCE 1888』と掲げる、水色のアールデコ建築。もとは生鮮市場(ウェットマーケット)として1888年に始まり、今は工芸品・お土産の屋内マーケットとして再生されています。冷房が効いていて、暑い昼のひと休みにも最適。チャイナタウンからもリトルインディアからも徒歩圏です。

名物、なまこ石鹸人気土産

名物、なまこ石鹸Sea Cucumber Soap

館内には日本人に人気のなまこ石鹸の店も。ランカウイ名物として知られる肌にやさしい石鹸で、お土産の定番です。ほかにもピューター製品、バティック、コーヒー・チョコ、東南アジアらしい雑貨まで揃い、値段はやや高めですが品質と品揃えは安心。ばらまき土産をまとめて買うのに便利です。

ぶらぶら歩くだけで楽しい

ぶらぶら歩くだけで楽しいCrafts & Gifts

館内はアーケード状の通路に小さな土産店がぎっしり。手作りの小物や民芸品、キャラクターグッズまで、見て回るだけで時間が経ちます。プタリン通りの露店(コピー品・要交渉)とは違い、こちらは定価で安心して買えるのが利点。雨の日や暑い時間帯の“避難先”としても頼れる一館です。

『CENTRAL MARKET KUALA LUMPUR』の大型サイン。記念撮影スポットにもなっています。

『CENTRAL MARKET KUALA LUMPUR』の大型サイン。記念撮影スポットにもなっています。

4

食は、KLの底力。

中華系が人口の四分の一を占めるマレーシア。チャイナタウン界隈は、日本人の口に合う“安うま中華”の宝庫です。チキンライス、クレイポット飯、バクテー、麺類——どれも気軽でおいしい。

Nam Heong(南香・1938年)老舗

Nam Heong(南香・1938年)Chicken Rice

チャイナタウンの一角に黒いファサードを構える、チキンライスの老舗「Nam Heong(南香)」1938年創業と歴史が長く、地元でも観光客でも行列ができます。チキンライスは1皿 約18.9リンギット(約760円)前後(時期・メニューにより)。マレーシアのチキンライスはローストチキンも定番で、こんがり香ばしいのが特徴です。

Nam Heongのチキンライス。チキンの皿・ライスの碗・スープの三点セットで。100Plusを片手に。

Nam Heongのチキンライス。チキンの皿・ライスの碗・スープの三点セットで。100Plusを片手に。

屋台飯と、麺と、土鍋ごはん

屋台飯と、麺と、土鍋ごはんStreet Food

Nam Heongのほかにも、界隈にはクレイポット・チキンライス(土鍋ごはん)・バクテー(肉骨茶)・ワンタンメン・牛肉麺の名店が点在します。とくにマレーシアのバクテーは、シンガポールの胡椒系と違い漢方の効いた濃い色のスープ。日本ではなかなか食べられないので、ぜひ一度。提灯の下、ローカルに混じって食べる一杯は格別です。

新九如 牛肉粉(Soong Kee)老舗

新九如 牛肉粉(Soong Kee)Beef Noodles

チャイナタウンのもう一つの名物が、老舗のワンタン麺・牛肉麺。地元で長く愛される新九如牛肉粉(Restoran Soong Kee)は、黒いソースを絡めた汁なし麺に、つるんとしたワンタンや鶏足(チキンフィート)のスープを合わせるのがKL流。屋台のチキンライスとはまた違う、食堂の滋味深い一杯です。中華系の食の底力が詰まっています。

新九如の一杯。黒ソースの汁なし麺+ワンタン、そして鶏足のスープ。KLらしい老舗の味。

新九如の一杯。黒ソースの汁なし麺+ワンタン、そして鶏足のスープ。KLらしい老舗の味。

5

旧シネマが、本の迷宮に。

いま、KLチャイナタウンでいちばん話題の名所がここ。1947年開業の古い映画館が、本と文化の発信地として鮮やかに甦りました。段々の本棚が圧巻の、“映える”立ち寄りスポットです。

REXKL ― 甦った1947年のシネマ名物

REXKL ― 甦った1947年のシネマREXKL

ジャラン・スルタンに建つREXKLは、1947年開業の老舗映画館「Rex Cinema」(1000席)を改装した複合文化施設。1972年と2002年の火災で一度は廃墟となりましたが、クリエイティブ/文化のハブとして再生し、アート展示・イベント・カフェ・飲食が集まる場所に。チャイナタウンの“今”を象徴する一軒で、提灯の下町歩きのアクセントにぴったりです。

BookXcessの、段々の本棚映え

BookXcessの、段々の本棚BookXcess

REXKLの目玉が、2階の大型書店BookXcess(2021年11月オープン)。かつて1階席(特等席)だった階段状の傾斜をそのまま活かし、段々になった木製の巨大書棚が“本の迷宮”を作り出しています。約1万平方フィートに8万冊超。打ちっぱなしの素っ気ない内装と本の洪水のコントラストが、KL随一のフォトスポットとして人気です。入場無料で気軽に立ち寄れます。

壁面を覆う多層の木製棚は圧巻。映画館の構造を活かした“段差”が、本の迷宮を生んでいます。

壁面を覆う多層の木製棚は圧巻。映画館の構造を活かした“段差”が、本の迷宮を生んでいます。

高台から見下ろすBookXcess。段々の客席跡が、そのまま本棚のひな壇に。入場無料で立ち寄れます。

高台から見下ろすBookXcess。段々の客席跡が、そのまま本棚のひな壇に。入場無料で立ち寄れます。

6

古いと新しいが、隣り合う。

提灯のメインストリートから一歩路地に入れば、壁を彩るストリートアート。そして頭上には世界2位の超高層ビル——古いものと新しいものが雑多に同居するのも、この街の見どころです。アクセスもよく、半日でぐるりと回れます。

路地裏の壁画。市場の群像(左・PASAR KARAT)や、牛車の時代を描いたセピア調の歴史画(右)など、街の記憶があちこちの壁に。REXKL周辺は特に壁画が多いエリアです。
路地裏の壁画。市場の群像(左・PASAR KARAT)や、牛車の時代を描いたセピア調の歴史画(右)など、街の記憶があちこちの壁に。REXKL周辺は特に壁画が多いエリアです。

路地裏の壁画。市場の群像(左・PASAR KARAT)や、牛車の時代を描いたセピア調の歴史画(右)など、街の記憶があちこちの壁に。REXKL周辺は特に壁画が多いエリアです。

ショップハウスの上に、Merdeka 118世界2位

ショップハウスの上に、Merdeka 118Old meets New

緑のショップハウスの屋根越しに、Merdeka 118(高さ約679m・世界で2番目に高いビル)がぬっと顔を出します。19世紀の下町と、最新の摩天楼が同じ画角に収まる——この対比こそ、いまのチャイナタウンの面白さ。歩いていると、ふとした角でこの“新旧の同居”に出会えます。

最寄りはPasar Seni駅駅すぐ

最寄りはPasar Seni駅Access

アクセスは抜群で、MRT/LRTのPasar Seni(パサール・セニ)駅を降りればすぐ。セントラルマーケットは駅前、プタリン通りも徒歩数分です。KL中心部(KLCC・ブキッビンタン)からも近く、観光の動線に組み込みやすい立地。バトゥ洞窟やKLCCと合わせて1日で回る人も多いエリアです。

早朝の静かなショップハウス通り。喧騒の前の、もうひとつのチャイナタウンの表情です。

早朝の静かなショップハウス通り。喧騒の前の、もうひとつのチャイナタウンの表情です。

◎ おすすめポイント
  • 提灯のアーケードが東南アジアらしいカオスな活気
  • 多宗教・多文化が徒歩圏に同居(最古のヒンドゥー寺院+中華廟)
  • MRT/LRT Pasar Seni駅すぐ・半日で回れる
  • 安うま中華とお土産が一気に楽しめる
△ いまいち・注意点
  • 露店のブランド品はコピー品(雰囲気を楽しむ場所)
  • 人混み・スリに注意(貴重品は前に)
  • 昼は暑い・人が多い(夕方が歩きやすい)
  • 寺院は服装マナーあり(肌の露出を控える・靴を脱ぐ)
💡 歩き方のコツ
編集部の評価(5段階)
活気・雰囲気 ★★★★★ 提灯アーケードのカオスな熱気
文化・寺院 ★★★★★ 最古のヒンドゥー寺院+中華廟が同居
アクセス ★★★★★ Pasar Seni駅すぐ・中心部から近い
グルメ・土産 ★★★★ 安うま中華とセントラルマーケット
快適さ ★★★★★ 昼の暑さ・人混み・スリ注意

多文化が、肩を寄せ合う一角

クアラルンプールのチャイナタウンは、19世紀の錫(すず)鉱業ブームで渡ってきた華人が築いた街として始まりました。街を束ねたカピタン・ヤップ・アロイの名は、いまもこの一帯の歴史に刻まれています。提灯の下にショップハウスが連なる街並みは、その時代の名残です。

面白いのは、中華系の街でありながら、マレーシア最古のヒンドゥー寺院が同じ区画に建っていること。1873年創建のスリ・マハ・マリアマンは、毎年タイプーサムにバトゥ洞窟へ銀の山車を送り出します。中華の廟、インドの神々、そしてすぐ近くにはモスクも——多民族・多宗教が当たり前のように同居する、マレーシアという国の縮図がここにあります。

そして頭上には、世界2位の高さを誇るMerdeka 118。古い下町と最新の摩天楼が同じ景色に収まる雑多さこそ、いまのKLチャイナタウンを歩く一番の醍醐味だと思います。

提灯も、寺院も、市場も、安うま飯も。
半日でKLの“素顔”が楽しめる街です。

このあたりで、あわせて。

← クアラルンプール観光ガイドへ