浸る。
アートサイエンス・ミュージアム ― チームラボの常設展がすごい
- 見どころ
- チームラボの常設展「フューチャーワールド」
- 営業
- 毎日 10:00–19:00(入場は18:00まで)
- 料金
- フューチャーワールド 大人 35ドル〜(約4,400円〜)(子供・シニア 29ドル〜(約3,600円〜))
- タイプ
- 屋内・雨でもOK/所要1〜2時間
- 最寄り
- ベイフロント駅(マリーナベイ・サンズ併設)

シンガポール観光で「どこへ行く?」と迷ったら、ここも有力。マリーナベイ・サンズのすぐ隣、蓮の花のような形の建物がアートサイエンス・ミュージアムです。設計はマリーナベイ・サンズ本体と同じモシェ・サフディ(Moshe Safdie)。2011年2月の開館以来、湾岸の景色の主役のひとつになっています。目当てはなんといっても、日本の「ウルトラテクノロジスト集団」チームラボ(teamLab)との協働による常設展「フューチャーワールド」。暗い空間に光の作品が満ちる、没入型のデジタルアートです。屋内なので、暑い日や雨の日の“逃げ場”としても優秀。マリーナベイ・サンズとセットで半日組み込みやすい一軒です。
まずは、あの形。
サンズの目の前。写真やテレビで見たことのある、花びらのような独特のフォルム。実はこの形にも、屋根の仕掛けにも、ちゃんと意味があります。
写真右の、お花のような形がアートサイエンス・ミュージアム。サンズのすぐ目の前、ヘリックス橋のたもとに建ちます。
2011年開館“蓮の花”と、歓迎する手Lotus / Welcoming Hand
設計はモシェ・サフディ。上から見ると10本の「指(花びら)」が空に向かって開く形で、咲きかけの蓮の花に例えられます。「シンガポールの歓迎する手(The Welcoming Hand)」という愛称も。建物のまわりは睡蓮の浮かぶ池に縁取られ、奥にはヘリックス橋やCBDの高層ビル群。外観を眺めるだけでも絵になるので、入館前に一周してみるのがおすすめです。
必見館内の“バスケット”と中央の池The Oculus
中に入ると、白いトラス(斜め格子)の柱がかご状に立ち上がり、見上げると頂部にオクルス(円形の開口)。その真下、床には円形のミラープール(反射池)が広がります。10本の「花びら」はそれぞれが大きなギャラリー空間になっていて、開口から自然光が差し込む設計。チケットを買う前のロビーですが、ここがすでに見どころです。
屋根が、雨を集める。
雨を“ごちそう”にする建築
この建物のいちばん面白い仕掛けが、屋根です。湾曲した凹型(ボウル状)の屋根が降った雨水を中央に集め、建物の芯にあたる吹き抜けを通って、約35mのカスケード(滝)となって最下層の反射池へ落ちる——熱帯のスコールを、そのまま館内の見せ場に変えてしまう設計です。
集めた雨水は捨てずに館内のトイレなど非飲用の用途に再利用されます。雨の多いシンガポールらしい、環境にやさしい仕掛け。「雨の日はがっかり」ではなく、「雨の日こそ屋根が働く」場所、と思うと見方が変わります。屋内施設なので、天気が崩れた日の予定変更先としても頼れます。
チームラボの世界へ。
ここからが本番。地下のギャラリーに広がるのが、チームラボとの協働による常設展「フューチャーワールド ― Where Art Meets Science」。暗い空間に光と映像が満ちる、没入型のデジタルアートです。
常設フューチャーワールドへFuture World
入口にはteamLab と ArtScience のロゴ。ここから先が、館内で唯一の常設展「フューチャーワールド」です。地下2階(B2)の大半を占める広いエリアで、テーマごとに小部屋が連なる構成。映像作品はリアルタイムで描き続けられ、二度と同じ瞬間がないのがチームラボ作品の特徴で、立つ位置や時間で見え方が変わります。所要は1〜2時間ほど。
一番人気の“花の滝”。壁いっぱいに花が咲いては散り、滝のように流れ落ちる映像。静止画では伝わらない、ゆっくり移ろう美しさです。


左:和テイストの山並みの映像。右:花の咲く樹を描いた縦長の作品。どれも毎瞬わずかに姿を変えていきます。
花の映像に囲まれた暗室。季節や時間で移ろい、まったく同じ画面は二度と現れないのだそう。大勢が足を止めて見入ります。
光のなかへ。
フォトスポット青い光の雨(クリスタル・ユニバース系)Crystal Universe
フューチャーワールドの代名詞ともいえるのが、無数のLEDが垂れ下がる青い“光の雨”の空間。鏡張りの部屋に光点が連なり、奥行きが無限に続くように見えます。来場者の動きに反応して輝きが変化する、いわゆるクリスタル・ユニバース系の作品。館内屈指の写真映えスポットで、立ち位置を変えながらゆっくり楽しみたいところです。


左:天井から光の雨が降り注ぐ空間。右:別の暗室は色の混ざり合うデジタルライトの世界。
触って、描いて、遊ぶ。
フューチャーワールドの魅力は“見る”だけではありません。描いた絵が動き出し、転がすと光が変わる——大人も子供もつい夢中になる、参加して楽しい作品が並びます。
参加型お絵かき水族館(スケッチ・アクアリウム)Sketch Aquarium
フューチャーワールドの看板的な参加型作品。用紙に魚やクラゲを自分で色塗りしてスキャンすると、目の前の大きな“海”の映像の中を自分の描いた魚が泳ぎ出す仕組み。子供たちが描いた個性的な生き物が群れをなして泳ぐ様子は、見ているだけでも楽しい。家族連れにいちばん人気のコーナーです。
家族向け光る球の部屋Light Ball Orchestra
天井から吊られた大きな発光する球(バルーン)と、床に転がる光る玉。押したり転がしたりすると色と音が変わり、部屋全体の光が連動して移り変わります。小さな子も体を使って遊べる、にぎやかなエリア。暗い館内のなかでもひときわカラフルで、つい長く遊んでしまいます。

花と雨の“ケンケンパ”Art of Hopscotch
大きな壁面に花や雨のデジタルアートが流れ、床には光る石畳が伸びる作品。床のマークを“ケンケンパ”のように踏んで進むと、踏んだ場所から光や模様が広がっていきます。体を動かして作品の一部になれる、子供に人気のコーナー。壁の映像も美しく、大人もつい足を止めます。


左:滑ると花火が上がる滑り台。右:小物を動かすと映像が変わる丸テーブル。どれも“参加して完成する”作品です。


左:ネオン色の街並みを描いた映像の暗室。右:虹色の光に満ちた水族館映像の空間で、来場者も思わずカメラを向けます。
- チームラボの常設展がいつでも体験できる(光の雨・お絵かき水族館など)
- 屋内・全天候型。暑い日や雨の日の“逃げ場”に最適
- 建築そのものが見もの(蓮の形・雨を集める屋根)
- マリーナベイ・サンズ併設で動線がよく、半日に組み込みやすい
- 有料(フューチャーワールド 大人 約35ドル前後/後述・改定あり)
- 人気の暗室は混みやすい(休日・夕方)
- 暗所が多く三脚不可・手ブレ注意。フラッシュは控えめに
- 館内は意外と広く、子連れだと時間がかかる
チケットと、企画展のこと。
フューチャーワールドは常設ですが、ここには世界巡回級の企画展もやってきます。料金や入口まわりの実際を、訪問時の様子とあわせて。
要確認チケット売り場で迷わないためにTicketing
入ってすぐがチケット売り場(TICKETING)。料金体系は「フューチャーワールドのみ」「企画展込み」「複数展セット」など複数のプランに分かれます。フューチャーワールドの大人料金は約35ドル(約4,400円)前後、子供・シニアの割引は約29ドル(約3,600円)前後が目安(シンガポール居住者は別料金。価格は改定されることがあるので公式で最新を確認)。窓口の隣に「SKIP THE QUEUE(オンライン購入)」のキオスクもあり、事前にネット購入しておくと並ばずに済みます。なお営業は日〜木 10:00〜19:00(最終入場18:00ごろ)・金土は10:00〜21:00(最終入場20:15ごろ)が目安で、時期により変動します。
過去には世界巡回級の企画展も
この美術館はアートとサイエンスの交差点を掲げ、常設のチームラボに加えて訪れる時期ごとに違う特別展が楽しめるのも魅力です。過去にはタイタニック展(2011-12)・ハリー・ポッター展(2012)・ゴッホ・アライブなどの大型企画展を開催。開館記念にはベリトゥン号(難破船)の唐代の遺物も公開されました。何が開催中かは旅程に合わせて公式の「What's on」でチェックを。
おみやげも忘れず。
退場前に立ち寄りたいミュージアムショップ。アートな小物やショップハウスの模型など、ここならではの土産が並びます。
撮影と、回り方。
せっかくの光の作品、きれいに撮りたいもの。暗所が多いここならではの撮影のコツと、効率のいい回り方をまとめておきます。
- 暗室が多いので手ブレ注意。手すりや壁で体を支え、連写でブレの少ない一枚を狙う
- フラッシュは控えめに。作品の光が飛んでしまううえ、周囲の鑑賞の妨げに(三脚・自撮り棒は不可の場合あり)
- “光の雨”や鏡の部屋は人の少ない開館直後が狙い目。立ち位置を変えると奥行きの出方が変わる
- お絵かき水族館は、自分で塗った魚が泳ぎ出すまで少し待つ。子供と来たら塗り絵から参加すると楽しい
- 白い服だと映像の色がきれいに乗る。逆に作品の色を活かしたいなら暗めの服が無難
- 所要は1〜2時間。混む暗室は後回しにして、空いたタイミングで戻る“二度回り”も有効
- 参加型が多く子供はよく遊ぶ。子連れは時間に余裕を、大人だけなら撮影しても1時間ほどで回れる
マリーナベイの、屋内の主役。
アートサイエンス・ミュージアムは単独で行くより、マリーナベイ・サンズ一帯とセットで回るのが効率的。最寄りはベイフロント駅、サンズの足元です。
ベイフロント駅花びらの軒下から、湾を望むAt Marina Bay Sands
この美術館はマリーナベイ・サンズの一角。蓮の“花びら”が張り出した軒下からは、睡蓮の池越しにCBDの高層ビル群やエスプラネードの“ドリアン”まで一望できます。最寄りはベイフロント駅(サークル線・ダウンタウン線)で、サンズのモール「ザ・ショップス」から地続き。ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、サンズのスカイパーク、湾岸の遊歩道もすべて徒歩圏で、暑さや雨で外歩きがつらい時間帯に屋内のこの館を挟むと一日の組み立てが楽になります。
夜は蓮の“花びら”にプロジェクションが灯ることも(写真は星空の演出)。ライトアップされた外観は、昼とはまた違った美しさです。
蓮の形の建築に、チームラボの光の世界。
暑さ・雨のときの一手としても、覚えておきたい場所です。
アートと、サイエンスの交差点
「ArtScience(アートサイエンス)」という名前のとおり、この美術館は芸術と科学・技術が出会う場所を掲げています。建築からしてそうで、蓮の花を思わせる造形美と、雨水を集めて館内の滝に変える合理的な仕掛けが、ひとつの建物に同居している。モシェ・サフディが手がけたこの“歓迎する手”は、開館した2011年からマリーナベイの象徴のひとつであり続けています。
そして館の心臓部が、チームラボとの協働による常設展「フューチャーワールド」。映像はあらかじめ録画されたものではなく、コンピューターがリアルタイムで描き続けるため、同じ瞬間は二度と訪れません。子供が塗った魚が泳ぎ出し、踏んだ床から花が咲く——“見る”だけでなく“参加して完成する”作品が並ぶのが、ここの新しさです。
マリーナベイ・サンズやガーデンズ・バイ・ザ・ベイのきらびやかさに目が行きがちですが、その隣でひっそりと、しかし確かに見ごたえのあるのがこの美術館。暑さや雨に強い全天候型という実用面でも頼れます。シンガポールに来たら、湾岸の散策にこの“蓮の花”をひとつ挟んでみてください。
